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これからは写真中心で行きたい

原発と活断層の続き。

原発と活断層──柏崎・刈羽だけではない - モジモジ君の日記。みたいな。にて追記&質問をもらったのでこちらも補足。

まず大前提として、俺自身も現在のままなら原子力発電所を止めるべきだと考えている。

ただしその根拠として「直下に存在している活断層」を持ち出すのはちょっとどうなのかなぁというのが、昨日のエントリの内容。



ぼんやり書いてしまったので、あたかも「山形浩生にかみつく池田信夫」みたいな文章になってしまったのは俺の不徳の致すところ。



「直下に活断層が存在するから原子炉の設置許可を取り消せ」というよりも「震源域までの距離も地震動の強さも、設計時の想定が間違っていたから取り消せ」と言ったほうが言葉の定義のような瑣末な議論に巻き込まれずに済む分確実だということが言いたかったわけで。



以下、id:mojimoji様の疑問へのお答え。

第一。東京電力原発の耐震構造を300ガルに合わせて設計しているが、今回の地震は600ガルを超えており、その意味で想定以上の地震が発生していることになる。だから、設置許可を取り消す根拠には十分なる。なぜなら、それは、今回の原発があった場所に、300ガルの耐震設計の原発を建設する許可なのであるから。

であれば、「原子力発電所の耐震設計上考慮すべき活断層」の見極めと「基準地震動」の評価が間違っていたと指摘するだけで十分なはず。断層面が原発の下にあろうが無かろうが、この評価が間違っていれば結局原子炉内に損害が発生してしまうのだから。

第二。「「設計の見直しと補強工事で対応できます」と言われれば、もうなすすべもなくなる程度の根拠でしかない」というのは、まったくそのとおりなのだけど、にも関わらず、このtkmisawa氏の書き方は変。むしろ、「設置許可を返上しないならば、設計の見直しと補強工事で対応することを言わねばならなくなっている」のであって(そして、それを東電が口にできないのは、tkmisawa氏の記事末尾でも書かれているように、そんなことをやったらコスト高すぎてとても原発を支えきれなくなるのが目に見えてるから)。

そのとおり。だからこそ活断層の評価の軸を「原子炉直下にある」から「原子炉にきわめて近い」に変えていかなければならないというのが俺の考え。
原子力資料情報室が指摘する

■「活断層はない!(東京電力)」

国、東京電力などは、今まで一貫して「原子力発電所の建設用地を決める際には、設置予定地のボーリング調査・周辺の地質調査・過去の文献調査などと行い、直下に地震の原因となる活断層がないことを確認しています。(東京電力:下記サイト参照)」と国民に説明してきた。しかしこれらの前提は、すべて崩れ去った。柏崎・刈羽原発の耐震安全は根底から覆され、国の設置許可の内容は事実と著しく相違する。国は設置許可を取り消すべきである。
東京電力地震対策】
http://www.tepco.co.jp/nu/knowledge/quake/quake-j.html

http://cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=551

という主張では、「活断層の地表変位そのものは原発敷地内に分布していないので、建設当時の前提は覆っていない」という反論が(反対派の住民感情的にはともかく)裁判所や賛成派住民に対して十分な説得力を持ち続けてしまうことになる。

第三。

そもそも、この論理だと、ユーラシアプレートに向かって太平洋プレートやらフィリピンプレートやらが沈み込んでいっている日本列島全部が巨大な活断層の直上にあることになっちゃう。あなたのうちも皇居も首相官邸も、あのデータセンターも、そして日本列島にあるすべての原子力発電所も。

とおっしゃるわけだけど、こう述べることで一体何を述べようとしているのかはよく分からない&興味がある。この中で、原発以外に「その破壊が甚大な被害をもたらすような施設があるか」ということ。破壊されることだけが問題なら、そもそも「日本列島に住むな」ということになるはず。その意味では、皇居の「真下に活断層」(tkmisawaさんが言うような意味で)があったとしても、「一応止めたけど、どうしてもというならご勝手に」と言えば言えなくもない話。だから、「この論理」で、「原発だけが問題になる」のは当然のこと。

「日本中が活断層の上にある*1」⇒「今更活断層の上に原発があるとか騒いでも説得力がないんじゃないか」というだけの言葉遊びで、ちょっと性質が悪かったかもしれない。
ただ、プレート境界面を「直下型地震」のリスク要因として問題としないのは、想定震源域と発生エネルギーについてある程度推定した上で一部超巨大地震以外については危険性がほとんどないとされているからであり、「その破壊が甚大な被害をもたらすような施設があるか」どうかではないということは指摘しておきたい。


「手前勝手に「活断層の直上」の定義を学術的な定義のみに限定し、発言を過大評価と解釈しうる文脈をわざわざ選択した上で、発言の全体をトンデモと位置づけている」

この部分については、こういう風にとられてしまったことについて深く反省したい。
ちょっと長くなり過ぎな気がするので、どこをどう反省したかについては、また後ほど。

*1:ふつうはプレート境界面を活断層とは呼ばないが